1888-12 · アルル · 意図の結び

子守歌

彼は、他人が自分の絵を見たときに何を感じるかを、ずっと設計しつづけた。ただ、その「他人」は、ますますその場に現れにくくなっていった。

  1. フィンセント・ファン・ゴッホ、『La Berceuse (Augustine Roulin)』、1889、アルル
    F504 La Berceuse (Augustine Roulin) 1889
  2. フィンセント・ファン・ゴッホ、『La Berceuse (second version)』、1889、アルル
    F505 La Berceuse (second version) 1889
  3. フィンセント・ファン・ゴッホ、『La Berceuse (third version)』、1889、アルル
    F506 La Berceuse (third version) 1889
  4. フィンセント・ファン・ゴッホ、『La Berceuse (fourth version)』、1889、アルル
    F507 La Berceuse (fourth version) 1889
  5. フィンセント・ファン・ゴッホ、『La Berceuse (fifth version)』、1889、アルル
    F508 La Berceuse (fifth version) 1889

五つの版。同じ母——オーギュスティーヌ・ルーラン——緑の上着、赤い髪、両手は見えない縄を握る。縄のもう一方の端は画面の外、見えない揺りかごにつながっている。背景は装飾的な壁紙。緑地の上に橙とピンクの花が平面的、対称的に咲く。浮世絵のような感じだ。橙、ピンク、赤い髪、緑の上着、緑の地——彼が口にしたとおり、色で書こうとした子守歌。版を重ねるたびに色合いを少し調整する。同じ歌を、わずかに違えて何度も歌うように。

手紙

1889年1月。ゴーギャンへ。「ゴーギャンに話した。遠い海から戻ってきた水夫が、自分の子守歌を見つける——そういう絵を想像し、描いた。」別の手紙。「私が探していたのは色彩の配置だ——緑と橙の調子、黄と青。」最も直接な一文。「これが色彩でできた子守歌であってほしい、それが私の望みだった。」縄はオーギュスティーヌの手にあるが、それは彼自身が揺らされたかった縄だった。

場所

アルル、黄色い家のすぐ隣。オーギュスティーヌ・ルーランは娘マルセルを生んだばかりで、彼が描く間、赤ん坊を抱いて隣の部屋に座っていた。最初の版は耳の二週間後に描き始め、最後の版はまだ包帯を巻いたまま描いた。五ヶ月前、ここは南方のアトリエの家だった。今は他人の母を描く家だ——彼自身の家族は四百キロの彼方にあったから。

Gauguin が来た前後、Roulin 夫人が三人目の子を産んだ。彼は、揺りかごのそばで見守る彼女の像を描きたいと思った。

彼は五つの版を描き、そのうち四つは前の一群で送り出され、身近な人びとに分けられた。手紙の中で彼は、この絵が漁船の船室の奥に掛けられ、海をさすらう者に慰めをもたらす装飾のようであることを思い描いた。さらに彼は、この絵と向日葵で一つの三連画を作りたいと言った。

Gauguin はすでに去っていた。あの三連画の計画は実現しなかった。

出来事の流れ

  1. 模写者 · Letter 736

    退院後の最初の週、《子守歌》を描きはじめる。オーギュスティーヌ・ルーランの手に縄。もう一方の端は画面の外の揺りかごへ続く

  2. 共感覚の物理精度 · Letter 736

    ゴーギャンへ書く——「ゴーギャンに話した。遠い海から戻ってきた水夫が、自分の子守歌を見つける——そういう絵を想像し、描いた、と。」

  3. 色彩実験者 · Letter 743

    「私が探していたのは色彩の配置だ——緑と橙の調子、黄と青。」四色、二組の補色対。互いに対立させながら、互いを慰めさせる

  4. 模写者 · Letter 736

    背景の装飾的な壁紙——緑地に橙の花——は彼の蒐集の浮世絵から直接来ている。日本の「図と地」の文法を、肖像の方法に丸ごと内在化させた

  5. 共感覚の物理精度 · Letter 739

    「これは色彩でできた子守歌であってほしい。」縄はオーギュスティーヌの手にあるが、それは彼自身が揺らされたかった縄だった

  6. 色彩実験者 · Letter 745

    第五版を完成——五度の調律が終わる。版ごとに色の比率がわずかに違う。調律師がピアノを調えるように

原文より

Je viens de dire à Gauguin que j'avais imaginé un tableau de marin rentrant chez lui et trouvant sa berceuse et que j'avais peint cela.

ゴーギャンに話したばかりだ——船乗りが家に帰り、自分の「子守歌」を見つける。そんな絵を思い描いて、描き上げた。

Letter 736
C'est un arrangement de couleurs que je cherchais, la berceuse avec ses tons verts et oranges, les jaunes et les bleus.

私が探していたのは、色彩の組み合わせだった——緑と橙、黄と青、《子守歌》のなかに。

Letter 743
Que ce soit une chanson de berceau en couleurs, voilà ce que j'aurais voulu.

色彩でできた子守歌——それが私の願いだった。

Letter 739

書簡出典

このページで参照したゴッホの書簡番号。Van Gogh Letters Project へリンクします。 vangoghletters.org