1888-09 · アルル · 脈絡の結び

夜のカフェ

「これは私が描いた中で最も醜い絵の一つだ。」手紙の中の、彼自身の言葉である。

  1. フィンセント・ファン・ゴッホ、『夜のカフェ』、1888、アルル
    F463 夜のカフェ 1888
  2. フィンセント・ファン・ゴッホ、『夜のカフェテラス』、1888、アルル
    F467 夜のカフェテラス 1888

《夜のカフェ》、油彩、72.4 × 92.1 センチ。ふつうの夜通しのカフェ——赤い壁、緑のビリヤード台、四つの黄色いランプが天井の下に光輪のように浮かぶ。床は傾いている。奥に酒場の鏡、白い服の主人が中央に立つ。この絵は色彩の和声をすべて裏切っている。赤と緑は調和へ向かわない。意図して衝突の臨界点まで押し込まれている。光は温かくない。光は毒を持っている。

手紙

1888年9月。手紙に書いた。「赤と緑とで、人間の恐ろしい情念を表そうとした。」別の手紙。「カフェというのは、人が自分を破滅させ、狂い、罪を犯しうる場所だ。」さらに。「下層の安酒場で、闇の力をある仕方で表現しようとした。」最後に自分でこの絵に判決を下した。「私が描いた最も醜い絵のひとつだ。《じゃがいもを食べる人々》と等価——ただし違う種類で。」

場所

アルル、ラマルティーヌ広場——カフェ・ド・ラ・ガール、彼がまさに移り住もうとしていた黄色い家のすぐ隣。終夜営業の店:漂流する船員、放浪者、寝床に払う金のない者なら誰でも。三晩続けてここで描き、昼に眠り、店主に家賃を借りていた。1888年9月——ゴーギャンまで五週間、耳まで三ヶ月。人を破滅させる部屋を、彼は一枚の壁を隔てて住みながら描いた。

アルルは果樹園と星月夜だけではなかった。彼ひとりの夜もあった——カフェは、眠れないときに彼が行く場所だった。

彼は書いた(letter 676)。「私は赤と緑によって、人間の恐ろしい情念を表そうとした。」さらにこう書く。「これは私が描いた中で最も醜い絵の一つだ。」これは彼自身の言葉であり、他人の言葉ではない。

色を危険信号として扱うこと——このやり方は、のちの絵から完全には消えず、ただ形を変えただけだった。

出来事の流れ

  1. 共感覚の物理精度 · Letter 677

    黄色い家の隣のカフェ・ド・ラ・ガールを描くことを決める。「カフェというのは、人が自分を破滅させ、狂い、罪を犯しうる場所だ。」

  2. 色彩実験者 · Letter 676

    三晩徹夜でカフェの中に居て《夜のカフェ》を描く。昼は家に戻って眠る

  3. 色彩実験者 · Letter 676

    「赤と緑とで、人間の恐ろしい情念を表そうとした。」補色がはじめて「不安を作るための道具」として使われる

  4. 共感覚の物理精度 · Letter 677

    「下層の安酒場で、闇の力をある仕方で表現しようとした」と書く。抽象の「闇の力」を、画面の具体的な物理構造に翻訳する

  5. 翻訳者 · Letter 678

    《夜のカフェテラス》を完成——同じ街のもう一つの顔。青い空、星、暖色のテラス。二枚を並べると、夜のための二つの語彙ができあがる

  6. 猛烈な読者 · Letter 677

    完成後の自己評価——「私が描いた最も醜い絵のひとつ。《じゃがいもを食べる人々》と等価——ただし違う種類で。」夜のカフェを、オランダ時代の代表作と並列に置く

原文より

J'ai cherché à exprimer avec le rouge et le vert les terribles passions humaines.

赤と緑で、人間の恐ろしい情念を表そうとした。

Letter 676
Le café est un endroit où l'on peut se ruiner, devenir fou, commettre des crimes.

カフェとは、人が破滅し、狂い、罪を犯しうる場所だ。

Letter 677
J'ai cherché à exprimer en quelque sorte les puissances des ténèbres dans un assommoir.

ある意味で、暗闇の力を——下層の安酒場のなかに——表そうとした。

Letter 677
C'est un des tableaux les plus laids que j'aie faits. C'est l'équivalent, quoique différent, des mangeurs de pommes de terre.

私が描いたなかで最も醜い絵のひとつ。《じゃがいもを食べる人々》と等価——もっとも、違う種類で。

Letter 677

書簡出典

このページで参照したゴッホの書簡番号。Van Gogh Letters Project へリンクします。 vangoghletters.org

技法上の根拠

この作品は、本サイトの「技法の変遷」において、以下の根拠として扱われます。

  1. 炸裂する筆触 1888.02 – 1889.05 時期へ F467 / JH1580 夜のカフェテラス 筆触 方向性のある筆触を示す代表作
  2. 炸裂する筆触 1888.02 – 1889.05 時期へ F463 / JH1575 夜のカフェ 色彩 色彩体系の転化を示す代表作 筆触 方向性のある筆触を示す代表作